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長過ぎね?俺の随筆(その24)『全自動餅つき機の正体』

2022年12月28日
長過ぎね?俺の随筆

皆さん、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。この随筆にとっては3回目の正月です。今年も、いや、今年は「三下り半」を突き付けられないように秘かに頑張ります(3年目だけに三下り、あー親父ギャグか)。皆さんはお元気ですか?私はお陰様で元気です。それでは今回もまた「俺の長過ぎるブログ」です。

 

あれは昭和50年代の始め位だったかなぁ。今となっては全く見かけなくなりましたが、とある某家電メーカーから「家庭用全自動餅つき機」なる家電が発売されて、売れに売れました。メーカーの狙いは「トースターみたいな位置付け」。この商品性格の設定がズバリ当たって、あの家もこの家もみんな持ってました。でも製品目的(これで何ができるのか)の設定のほうは大ハズレでした。家庭用全自動餅つき機が作り上げるものは餠ではなく「餅のように見える団子」でした。今回はこの「ハズレ大ウソつき」について言及したいと思います。題して「全自動餅つき機の正体」です。

 

「家庭用全自動餅つき機」の構造は至ってシンプル、当然販売価格もお手頃、世間で「これさえあれば正月の餅代を節約できる」と言われて大ヒットしました。街角の和菓子屋さんは「もうこれで俺達の商売もおしまい」などと震え上がったものでした。その当時はまだ戦前からの風習がちらほら残り、お正月といえば7日間くらいどの店もお休み、どの遊技場もお休み、どの遊園地もお休み、スーパーは存在するけど規模は小さく正月はお休み。コンビニはもちろんありません。行くところがないから、仕方なく、寝そべって餅でも食ってテレビを眺めながら、このように考えたものでした「金持ちなら長期滞在の旅行先で楽しく過ごせるけれど、俺みたいな貧乏人はただ家に引きこもって、ぼけーっとテレビでも見てるしかない」と考える、そういうご時世でした。そんな有り様だから、お正月の餅代あたりが「高い」と目についてしまったのでしょう。

 

話しは変わりますが、ここで突然クイズです、景品はありませんが。・・・それでは問題。「家電メーカーの家庭用全自動餅撞き機でこさえたお餅」と「和菓子屋さんやお米屋さんで売ってるお餅」の違いを述べよ。じゃじゃーん、ヒント。原材料ではありません、原材料は全く同じなので、家庭用だとか業務用だとかの区別はありません。和菓子屋さんのほうが杵と臼での手作りだ、というわけでもありません、どちらも全て機械作りです。大ヒント、和菓子屋さんのほうが1工程多いだけです。特大ヒント、先程序文で言いました。 家庭用の安価な機器では再現不可能です。それが不可能だと知って和菓子屋さんは胸を撫で下ろしました。さて、いったい何が1工程多いのでしょう??

答えは「お米をぺったんこぺったんこと、撞いてるか撞いてないかの差」だけです。家庭用全自動餅つき機とは、餅を撞いてるわけではなく、餅米を捏ねてる(こねてる)だけだったのです。捏ねた(こねた)だけの餅米と、捏ねてから撞いた餅米は、見た目と味覚は完全に同じようなものですが、食感は全然異なります。撞いた餅は粘り気があって、時々嚥下不良のお年寄りが喉に詰まらせますが(たまに大事故に)、撞いてない餅は「お団子」と呼ばれて、粘り気が全くない食感を楽しむものになってます。お団子はお団子でまたいいもので、私は結構好きなんですけど。同じ原材料でも、撞いているか撞いてないかだけで、食感も呼び名も全然違うのです。だから「みたらし団子」は、団子であって餅ではないのです。昔からこのように言うでしょう?「餅は餅屋」一般人には見えない「餅の世界」か何かがあるということなのでしょう。

 

スーパーなどで売ってる「しゃぶしゃぶ用お餅」は、捏ねただけののし餅を8Cm×4Cm×厚さ2mmくらいにスライスしただけのタイプです。捏ねただけだから、お湯に浸しただけであんなにくたくたになるのです。撞いた餅ならお湯ごときに浸しただけであんなにくたくたにはなりません。サトウの切り餅を、私は見たことはありますが食べたことはありません。あれは、撞いてあるんですかね?それとも捏ねただけなんですかね?(おそらくだけど、撞いてあると思う、密かな期待に反して、うーん、へそ曲がり)

 

皆さんは、みたらし団子を食べたことがありますか?たぶん、あるでしょう。串に4~5コぶっ刺したお団子に甘辛い醤油だれを塗ったもののことです。コンビニでもよく見かけますね。この地方では、特有な処置をしてから販売します。「団子をしっかり焼いてから醤油だれを塗って提供」してるようです。そんなみたらし団子を食べて育った私は、焼かれた痕跡がないコンビニのみたらしには素直に手が伸びません。

皆さんはよもぎ餅(草餅ともいう)を食べたことがありますか?たぶんあるでしょう。季節感たっぷりで、いいもんですね。よもぎの季節は春、よもぎ餅の季節もやっぱり春です。いい匂いですね。お花見のお供にも最適だし、お祝いの席にあれば嬉しいですね。中身に粒餡が入ったもののほうがこし餡タイプより私は好きです(あんこ半殺しもダメ、あくまでも粒餡がいい)。よもぎ餅は皮が特徴的ですよね、よもぎを自ら(みずから)採ってきて、皮に混ぜ込みます。あの皮の原材料は何通りもあります。上新粉あるいは白玉粉または餅粉、もしくは「餅米によるついた餅」の4種類のいずれかです(店によって異なる)。

 

第1に、上新粉。これは乾燥させたうるち米の粉です。粉が出来たら水に晒して、その沈殿物だけを乾燥したもの。これが上新粉です。これを使って成形して蒸した場合。 一般的に草餅(よもぎ餅)の皮といえばこれです。

第2に、白玉粉。これは乾燥させた餅米の粉です。これを使って蒸した場合のことを言います。一般家庭において一番なじみ深いのがこの白玉粉です。(手作りの草餅ならば)

第3に、餅粉。これは蒸した餅米を濡れたままで製粉して作った場合です。成形した後、もう1回さらに蒸します。饅頭の皮として一般的だけど、草餅の皮としては少数派で、大福に使うことが多いようです。 成形したものを求肥(ぎゅうひ)とも言います。

第4に、撞き終わった餅を使う場合。たまたまですが、私のたった一人の高校時代の友人が、今和菓子職人で、そんな彼が作る草餅がこのタイプです。残念ながら極めて少数派です。

この4通りがあるのです。粘り気の食感を少しでも出すために「蒸す」という動作が多くて余分なのです。餅米を直接使う場合だけは「蒸す」の代わりに「蒸してから撞く(つく)」ですけどね。撞いてなくても蒸しただけで、口先で引っ張ったらそこそこに伸びます。

 

人はいつも「目の前に出現したものを、名前がとおった人が作ったものなら、権威に圧倒されて鵜呑み。名前がとおってない人が作ったものなら、けんもほろろにしかと」と両極端です。たしか心理学用語で「ハロー効果」と言ったと思います。テレビを見てて、ルックスのいい人や頭の良さそうな人が言うことはついつい信用してしまうが、一目見て「無意識のうちに」不快感を感じてしまった人の言うことはなぜだか信用できない、という心理です。その具体例が「家庭用全自動餅撞き機」なのです。あの家電は「家庭用全自動餅捏ね機」と呼ぶべきではないでしょうか?一流メーカーが作ったものだから、名前を鵜呑みにしてしまったのです。「餅を捏ねる」という表現方法が、不衛生そうで一般的じゃないからと言って、あのネーミングはあまりにも実際からかけ離れ過ぎです。

我々は「物事の本質」を見誤ってはなりません。気を付けてないと、それは突然にやって来ます。本質を見抜けないから「餅捏ね機」なんかを購入してしまうのです。幸いにも私は購入しませんでした。無駄金を使わずに済みました。やはり食感重視で「捏ねた餅」では満足できないです、撞いた餅が食べたいのです。昔からこのように言うでしょう?「安物買いの銭失い」

 

今回はわりに短く済みました。だけど、短いと書いた気がしません。何かを言い忘れたような気がします。必然的に長文になってしまいますが、今年も何卒よろしくお付き合いください。次回のテーマは「バンドの浮沈は運」の予定です。それではご機嫌よう、さようなら。